約 3,703,413 件
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/248.html
クリフトとアリーナへの想いはPart9 145 名前 歩兵  Mail sage 投稿日 2008/05/21(水) 21 37 04 ID v6HI/LT90 牢獄の花 1 「クリフト様、お茶をおもちしました」 クリフトは眉をあげる。そこには小柄なで垢抜けしていない、いかにも 純朴そうな娘がいた。ほんのりと頬を染めている。 「ありがとう、リンダ。そこへ置いておいてください」 リンダと呼ばれた娘は肯き、カップをテーブルに置く。 「寒くありませんか。他に何か必要ありませんか。何なりとおっしゃって 下さい」 「そんなに気を使わないで下さい。私は賓客ではないのだから」 「いいえ。クリフト様は、ここにいるべきお方ではないと信じてます」 リンダは迷いもなく言い切る。クリフトは苦笑する。 ここはガーデンブルクの地下牢。勇者達一行は二日前、この城にたどりついた。 ところが首飾りを盗んだとの言いがかりをつけられ、女王の裁きを受けた。 クリフトの見たところ、女王は彼らが犯人だとは思っていないようだった。 にもかかわらず、彼女は勇者にこう命じた。 「自分達が犯人でないというなら、あなたがたの手で真犯人を見つけ なさい。ただし、逃亡しないように、一人人質として預からせてもらいます」 勇者は仕方なくそれを受け入れた。そして誰を人質にするかについて、 「全員必要なメンバーだ。誰か一人をなんて選べない。くじで決めよう」 となり、くび引きが行われた。そして見事当たりを引いたのが、われらが 神官クリフトだった、という経緯である。 「すまない、クリフト。調査が一段落したら戻ってくる。そうしたらまた くじ引きして交代するから」 勇者は本当にすまなそうにクリフトにわびたが、アリーナは 「クリフト、せっかくだからずっとここで暮らしたら? 女ばっかりでハーレムじゃん」 などとはしゃいだものだった。 かくてクリフトは一人地下牢にて過ごすこととなった。 若く健康な男にとって、ろくに日もあたらぬ地下牢に終日閉じ込められる というのは拷問でしかない。ましてや、愛するアリーナと離れ離れに なって過ごさなくてはならないなんて、とても耐えられない。 「ああ、もどかしい。俺も一緒に冒険したい」 「俺のいない間に、姫が勇者あたりといい仲になったりしたら…」 あげくには、 「そもそも、どうして俺なんだ。回復役で剣も使える俺よりも、人質に ふさわしい人はいるだろうに」 などと、平素なら絶対にしない思考までがクリフトの脳裏をよぎった。 そのクリフトのところへ、ガーデンブルクの女性兵士が入れ代わり立ち代わり に訪れる。 最初は、よほど逃亡を警戒されているのか、と思った。しかし彼女たちは そんなそぶりも見せず、ただクリフトの様子をうかがい、遠巻きにして 見守っているだけだった。 クリフトには理由はわからなかったが、城の中ではクリフトは一躍アイドル となっていたのだった。もともと男が滅多に訪れない女の園、そこへ 現れたのは知的な容貌と頑健な肉体をあわせもつクリフトである。興味を ひかない方がおかしかった。 と言っても、彼女たちがクリフトと直接口をきくことはない。その役目は、 もっぱらリンダという純朴な娘が担当だった。彼女は女王に命じられて、 クリフトの世話をすることになっているらしい。 「女王様だって、クリフト様たちが犯人ではないとおわかりのはずです。 でも、訴えがあった以上無条件で釈放するわけにもいかないんです。 すいません、クリフト様をこんな所に閉じ込めたりして」 「別にあなたのせいじゃないですよ、リンダ」 クリフトは穏やかに言った。リンダがさらに頬を染める。 リンダは最初からクリフトに好意的だった。寒くないようにと毛布や 布団を運び込み、クリフトの希望を知って聖書を差し入れたり、そして お茶やお菓子と細々と世話を焼く。 リンダはどうもクリフトに好意を持ち始めたらしい。クリフトは正直喜ぶ よりも当惑していた。俺は勇者とともに世界を救うという使命があるし、 何よりも愛する人がいる…。 そう考えて、クリフトはため息をつく。 今日で3日目。勇者たちはまだ戻って来ない。何をしているのやら。 そのクリフトのため息を耳にし、リンダはあわてた。 「あの、クリフト様、何か私お気にさわりました?」 「え、いや、何もないけど」 クリフトは自分のため息がリンダを誤解させたと知り、慌てて言った。 「すまない、リンダ。ただ勇者達はまだ戻って来ないのかなと思って、 ついため息をついてしまいました。あなたのせいじゃありません」 「そうですか…でも」 「でも?」 「勇者様達が真犯人を見つけてお戻りになられたら、クリフト様もここを 出ていかれるのですね」 そう独り言のようにつぶやくと、はっと我に返って言った。 「やだ、私何を言って…ク、クリフト様、これで失礼します」 リンダは大きな足音を立てて出ていった。鍵を開けっ放しにして、である。 やれやれ、と思いつつもクリフトは門番を読んで鍵を締めさせた。 勇者達は今日も戻らなかった。 4日目。 リンダは今日もやってきて、自分が焼いたというケーキとお茶をもって かいがいしくクリフトの世話を焼く。 「クリフト様、外の話を聞かせていただけませんか。私、生まれたときから ずっとガーデンブルクで過ごしたので、外の国を知らないんです」 リンダが目を輝かせる。クリフトも退屈していたことであり、望まれるまま 話をした。サントハイムのこと。エンドールの武術大会のこと。勇者たちと ともに今まであちこち冒険してきたこと。 どの話になっても、クリフトはいつも最後はアリーナの話題になった。 リンダは黙って聞いていた。クリフトが話し終わると、リンダは寂しそうに 「クリフト様は、本当にアリーナ様を愛していらっしゃるんですね」 そう言い、そして去っていった。 後にはクリフトが一人残された。 いつしか夜になっていた。今日も勇者達は戻らなかった。 俺は必要ないのか? 俺なしでこれから冒険するつもりなのか? クリフトはそんな思いにとらわれ、激しく落ち込んでいた。 5日目。 今日もリンダはクリフトの元に来ていた。 俺はいつまでここに閉じ込められているんだ。クリフトの苛立ちは頂点 だった。温和なクリフトとしては珍しいことだった。 リンダは懸命にクリフトをなだめ、気を紛らわそうといろんな話をした。 「大丈夫ですよ、勇者様もアリーナ様もきっとすぐお戻りになります」 何度もリンダはそう言い聞かせた。クリフトはこの無関係な少女に 慰められる自分を恥じた。 「リンダ、すいません。あなたに当たったりして」 「いいえ、全然気にしません。でも、もし本当に勇者様たちがお戻りに ならなかったら、ここで私と…」 「…」 「ごめんなさい。忘れて下さい。私、どうかしてるんです」 「リンダ…」 クリフトはリンダを見つめる。 そう、ここでリンダと暮らして何が悪いというのだろう。勇者達が自分を 必要としていないなら、俺は自分を必要としてくれる女と一緒に暮らしても 誰からも文句を言われる筋合いはない…。 そう考えて、あわててクリフトはその思いを振り払った。 いけない、自分は何を考えているのだろう。 リンダは去っていった。今日も勇者たちは戻らなかった。 6日目。 昼を大きく過ぎたというのに、今日はリンダが来ていない。どうしたんだろう。 いつしかリンダは、クリフトにとって大きな存在になっていった。 門番に聞いてみる勇気もなく、ただクリフトは落ち着きをなくし、そんな 自分が情けなくて、聖書を読んで懸命に心を落ち着かせていた。 「クリフト殿、出られよ。勇者殿がお戻りだ」 クリフトの前に現れたのはリンダではなく、門番だった。 クリフトはあわてて身を起こし、一路牢の外へと駆け出した。 「遅くなってすまなかった、クリフト。洞窟が想像した以上に大きくて、 戻ろうにも戻れずに、結局最深部まで行って盗賊を倒してきたんだ」 勇者がクリフトに詫びる。 「いいえ、疑いがはれて助かりました」 クリフトは答える。彼らは王女に再びまみえ、最後の鍵や天空の防具を 受け取り、城を後にすることになったのだった。 「クリフトは女に囲まれて楽しくやってるだろうから、放っておいて あげようかって私勇者に言ったんだけどね」 アリーナがクリフトに笑いながら言う。さすがのクリフトもムッとする。 見送りの人々に挨拶しながら、クリフトはその中にリンダの顔を見つめた。 遠目にでもすぐわかった。懸命に涙をこらえているようだった。 「俺がここでリンダと暮らして、何が悪いんだろう」 再びクリフトにその思いがよぎった。クリフトは振り返り、勇者を見た。 「俺、ここに残ります」 まさにその言葉を発しようとした瞬間、アリーナの言葉が先に届いた。 「ほらクリフト、何してるの。ここで休んでた分、これからあなたには倍も 頑張ってもらうんだからね。早く来てよ」 クリフトはアリーナを見た。アリーナは悪戯っぽい笑みを浮かべている。 その笑顔に、クリフトは一瞬で身も心も吸い込まれる思いを感じた。 ごめん、リンダ。やはり、俺はこの人にはかなわない。 「はい、姫さま。今まいります」 クリフトはそう言うと、振り返ることなくアリーナの元へ駆けていった。 fin
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/340.html
クリフトとアリーナの想いはPart10 388 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2009/10/02(金) 00 59 37 ID qislUYpkO ROMっておりましたが、初SS投下します DS版ピサロ加入後と言うことで… * 【似ている二人】 「ピサロとクリフトって似てるね」 アリーナの言葉にクリフトは困惑した よりにもよって、憎き敵でもある魔族の王と似ているというどういうことか 「あの、姫様…どういうところが似ているのでしょうか?」 「笑った顔よ。笑顔」 クリフトは更に困惑した 似ていると言われても『死の呪文と治癒の呪文を使うことが出来る』くらいしか思い付かないのだから 「笑顔が…ですか?」 「うん。ピサロってね、ロザリーさんといるときはすごく優しい笑顔になるの。 そのときの表情がなんかクリフトに似てるなーって思ったの」 考えてもいない答えが返ってきたのか、クリフトは顔を少し赤くした 「そ、そういうことでしたか…! てっきり私の笑顔は恐い笑顔なのかと思ってしまいました…」 お恥ずかしいです、とクリフトは笑った その少し照れた笑顔を見て、アリーナも笑った
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/81.html
クリフトとアリーナの想いは Part4.2 640 :(前編)1/3 ◆YdWRYb4NOY :2006/03/19(日) 21 42 58 ID l0WIgsy40 がんばれクリフト!新婚道中 ~テンペにて~ 紆余曲折を経て、晴れて夫婦となったサントハイム王国の姫アリーナと、王室付の神官クリフト。 そんな彼らが始めたのは、目的もあてもない、お忍びの二人だけの旅… 早朝に出発してから数時間が経ち、山あいの村テンペの入り口が見えてきました。 普通の旅人なら夕方近くまでかかりますが、まだ太陽の位置は高いままです。 さすが『導かれし者』と呼ばれた中でも一、二を争う機動力の持ち主だけあって、見事な早足ですね。 二人が村に入ろうとすると…何やら様子がおかしいのに気がつきました。 村人たちの動きはあわただしく、村のあちこちに垂れ幕がかかっています。 木陰に隠れてそっとのぞくと、『歓迎!アリーナ王女殿下ご夫妻ご巡幸』の文字が。 このまま村に入ろうかどうか二人が躊躇しているところに現れたのは、かつて魔物が住み着いたこの村で ただ一人生贄としての宿命を免れた娘、ニーナと彼女によく似た小さな女の子の姿でした。 彼女に案内され、近道だという山道を抜けると小さな丘があり、赤い屋根の家が見えてきました。 ニーナは二人を部屋に通すと、お茶と昼食を用意してくれました。素朴ながらもほどよい味付けに食が進みます。 彼女もエプロンを外して彼らの向かい側の席に座ると、先ほどの女の子が傍らにちょこんと同席しました。 「娘のアンナです。3歳になりましたわ。ほらアンナ、お客様にあいさつしなさい。」 女の子は少々ぎこちない表情でぺこりとお辞儀をしました。子供らしいかわいい仕草です。 「お二人ともご結婚おめでとうございます。私もお式を拝見したかったのですが、 主人が一昨日からフレノールへ行商に出ておりますので、残念ながら行けませんでしたわ。」 「いえ、ありがとうございます。お気持ちだけでもありがたく頂戴いたします。」 代表でクリフトが答えると、照れながらも二人で軽く一礼をしました。 「ところでニーナさん、なぜテンペの皆さんは私たちが旅に出たことをご存知なのですか?」 「そうよそうよ、ここの人たちには誰にも喋ってないのに。絶対おかしいわ!」 「実は私もよく存じ上げないんですが…今回のお二人のことが書かれた文書が教会に落ちていたそうです。 狭い村ですから話はあっという間に広まって、みんな総出で歓迎の式典の準備に入ったんですが、 以前もお忍びの旅でしたから、お二人はそういうのはあまりお好きではないかと思いまして… それで私、何回かこっそり村の入り口まで見にきていたんです。」 「そうでしたか。お気遣い感謝いたします、ニーナさん。しかし一体誰が、なぜそのようなことを…」 クリフトはあごに手をあてて怪訝な表情で考え込みますが、特に心当たりは思いつきません。 「それより、お二人とも朝からここまで歩かれたのならお疲れでしょう?お湯を用意してありますので、 先に汗とほこりを落とされてはどうでしょうか?その間に私は夕食の支度を整えておきますから。」 ニーナは食器を集めると、立ち上がって再びエプロンを身につけます。 「ではアリーナ様、お先にどうぞ。」 「私は後でいいわ、クリフトあなたが先に入ってよ。」 「いえ、ですが…」 順番がなかなか決まらず、二人の間で押し問答が続きます。 「あの、何でしたらお二人で一緒に入られてはいかがですか?」 「ええーーーーっ!?」 二人は顔を真っ赤にし、思わず大声で叫んでしまいました。アンナはびっくりして母親のニーナにしがみつきます。 「ちょ、ちょっと、ニーナさん。な、何ということをおっしゃるんですか!?」 「あら、夫婦の絆がより一層深まると評判ですのよ。ご近所の方もこれで倦怠期を乗り切られたとかで…」 ニーナは他にもいろいろと効能を説明しますが、二人は『一緒に入る』の台詞が頭の中で回りっぱなしで 上の空状態になっています。 「…では私は夕食の準備に入りますので、お二人も湯に入られる準備をなさって下さいませ。うふふふ。」 ニーナはそんな二人を見て、くすくす笑いながら部屋を出て行きました。アンナも彼女についていきます。 いざ湯屋まで来たものの、さすがに二人一緒に入る勇気はなく、結局アリーナから順に入ることにしました。 彼女がドアを開けようとすると、アンナが湯上げのタオルと部屋着を手渡します。 「ありがとう。そうだアンナちゃん、お姉ちゃんと一緒に入ろうか?」 小さくうなずいたアンナの頭を撫でると、湯屋の中に入っていきました。 「あー気持ちいい。それにいい香りのお湯だし。ねっ、アンナちゃん。」 白い花を浮かべた薬湯につかるアリーナはすっかり上機嫌です。アンナも鼻歌交じりで自分の身体を洗います。 湯から上がり、アンナの頭と身体を拭いた後、アリーナは鏡に自分の上半身を映して何やらじっと見つめています。 「うーん、やっぱり私のは普通の人より小さいのかしら?アネイルの温泉でもそんなこと言われたっけ。 まあ、どうせマーニャやミネアとは勝負にならないのはわかってるんだけど…それはそれで悔しいわね。」 彼女にしては珍しく一人でぶつぶつとつぶやいています。 一方クリフトは、二人を待っている間も何やらまた考え込んでいる様子です。 (ニーナさん、見かけによらず大胆なことを…しかし、どうせなら彼女がおっしゃるように どさくさに紛れて一緒に入ってしまえばよかったのだろうか…ああっ、私は何を想像しているのだろう…) 勝手に想像して一人で真っ赤になっている彼。そこに部屋着を着たアンナが小走りしていくのを見かけました。 (ああ、もう二人とも出られたんだな。気がつかなかった。では、そろそろ私も…) 彼が着替えを持って湯屋に入ったその時――― 「きゃあぁーーーーっ!!」 「うわぁーーーーーっ!!」 彼はすぐさま後ろを向き、姫もあわててしゃがみ込みましたが、時すでに遅し。 彼の目に飛び込んだのは、うなじに絡みついた後れ毛と透き通るような白い肌、そして… 両腕からこぼれんばかりのふくらみでした。 「あらあら、まあ。これは大変なことになりましたわね。」 悲鳴を聞いて駆けつけたニーナがそこで見たものは、鼻血を出したまま気を失っているクリフトと 必死で彼の頬を叩いて呼びかけるアリーナ、そして二人を見てきょとんとしているアンナの姿でした。
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/397.html
ペギー,◆e.sLpeggy2クリフトのアリーナの想いはPart12 425 名前 戦う理由 1/4 Mail sage 投稿日 2011/10/17(月) 23 53 41.96 ID 9GJ7VNi00 「クリフトー、稽古しようぜ、稽古。」 「またですか、あなたも元気ですね。」 クリフトは剣を振り回す俺を、苦笑しながら眺めた。 「たまにはライアンさんと練習したらどうです?」 自分の剣を取りに行きながらも尋ねてくるクリフトに、俺は首を振った。 「いや、ライアンさんの剣は重いから、体調万全じゃないとしんどい。」 「調子が悪い時は、私程度がちょうど良いと言うわけですか。」 クリフトは、ちょっと傷ついた顔をしたが、それでも剣を構えてくれた。 「ふぃーっ、疲れたーーー!!」 ひと通りの打ち合いを終えると、俺は、その場に座り込んだ。 「お疲れ様です。」 クリフトが笑いながら長剣を拭って鞘にしまう。 俺はクリフトを見上げた。 「お前、よくそんな長い剣使ってるよな。扱いづらくないか?」 前々から思っていたことだ。 しかしクリフトは、手に持った剣を眺めて首を傾げた。 「そうですか?…私は、初めて習ったのが長剣でしたから…。」 「へえ?珍しいな。」 普通は短めの剣から入るもんだけど。 と、クリフトが苦笑した。 「私が最初に習ったのは実戦ではなく、剣舞の方でしたので。」 「ああ、なるほど。」 以前アリーナから聞いたことがある。 神官は皆、神に納めるための剣舞を習うんだって。 「お祭りの日には飾りのついた長い剣を持って皆で舞うんだけど、 それがね、すっごい綺麗でカッコいいの!」 アリーナはそう言って目をキラキラさせていたっけ。 「そういわれると確かに、お前の剣の動きって舞みたいだよな。 何だかこう、流れるみたいで。」 俺は褒めたつもりだったんだけど、クリフトは嫌な顔をした。 「…まだ、そう見えますか?」 どうやらクリフトは、自分の剣が実戦向きでないと言われているように 感じているらしい。 「何だよ、別にいいじゃないか、動きは綺麗な方が。」 しかしクリフトは首を振った。 「剣舞のために習う剣技は、あくまでも舞であって 人を傷つけることがあってはならないんです。 切っ先で人を傷つけないように剣を引いてしまう癖を直すのに 随分苦労しました…もう克服したつもりだったんですが。」 「へぇ…。」 俺は、クリフトを見上げながら、ふと考えた。 神に捧げる技としてしか剣に触れたことのなかった神官。 サントハイムがあんなことになってなければ、こいつはきっと 戦いとは縁遠い場所に身を置いて一生を過ごしたに違いない。 俺は山奥で育ったせいか、魔物とやり合うのも日常茶飯事だった。 物心ついた頃には、短剣を握ってスライムとやり合っていたものだ。 でも、クリフトにはそういう攻撃的なニオイを全く感じない。 むしろ、こいつの能力は命を生かす方に発揮される類のものだ。 そんなこいつが、今のように平然と魔物を屠るようになるまでには、 きっと俺には想像もできないような葛藤があったに違いない。 長くて重い長剣を実戦で使えるようになるまでにも、 血のにじむような努力をしてきたんだろう。 そして、こいつがそんなにも努力する、その理由はもちろん…。 「クリフトー!」 明るく響く声に、クリフトがすごい勢いで振り返った。 「姫様!」 そして、手を振るアリーナのもとに笑顔で駆け寄っていく。 毎度の光景を眺めながら、俺はごろんと草の上に横になった。 たとえ想いが届かないとしても。 たとえ単なる独りよがりだとしても。 その人を守るためなら、自分の生き方を変えることも厭わない。 クリフトは、そうやって強くなってきた。 今のあいつの太刀筋は、決して俺やライアンさんに劣らない。 だったら、俺はいったい何のために強くなっているんだろう。 太陽がまぶしくて、俺は目を閉じた。 脳裏に、羽帽子をかぶって微笑む、懐かしい顔が浮かぶ。 強くなって、戦って、その後、俺にはいったい何が残るんだろう。 不意に、そのまま大地に溶けてしまいそうな疲労感が俺を襲った。 目を閉じてもまだ太陽はまぶしかったけれど、顔を背けるのも億劫で 俺はそのままじっと横たわっていた。 と、不意に目の前が翳って、俺は目を開けた。 そこには頬を膨らませてこちらを覗き込むアリーナの顔があった。 「ソロったら、稽古するんなら、私も呼んでくれればよかったのに!」 俺はゆるゆると首を振った。 「無理。今晩は俺が不寝番だもん。お前とやり合う体力はないの。」 「…どうも先ほどから、そこらへんが引っ掛かるんですよね…。」 アリーナの後ろでクリフトがブツブツ言っている。 「それよりも、ソロ、クリフトがお茶淹れてくれるって!行こう? 稽古して喉渇いてるでしょう?私、何だかお腹も空いちゃった。」 「でしたら、昨日街で買ったクッキーがあるので、 それをお出ししましょうか。」 「やったー、クリフト大好き!ほら、ソロ、早く起きて!」 アリーナが俺の手をつかんで、ぐい、と引っ張り上げた。 さすが力は抜群だ。俺はあっという間に引き起こされた。 「稽古ではライアンさんや姫様に比べて力不足かもしれませんが、 あなたの喉の渇きを癒すくらいは、お役に立てると思いますよ。」 そう言って笑うクリフトに、アリーナが笑いかけた。 「うん、クリフトのお茶はどこのお店よりも一番美味しいものね!」 「ひ、姫様にそう言っていただけるなんて、光栄です…。」 「…。」 ―――ああ、そうか…。 笑顔で言葉を交わす2人を見ながら 俺はふいに目の前が開けたような気がした。 俺の戦う理由。 俺が強くなる理由。 それは目の前にあるじゃないか。 大切な友人たちの愛する者が奪われないように。 あんな悲劇を二度と繰り返さないために。 そして戦いが終わった後に、こいつらが変わらず笑顔でいてくれたら そうしたら、きっと、俺も何かを掴める気がする。 俺は2人に向かって手を差し伸べた。 「よし、お茶も飲むしクッキーも食べるぞ! そしてたくさん修行して、俺はもっと、もっと強くなるからな!!」
https://w.atwiki.jp/psps/pages/726.html
2012年03月31日(土)広島県・広島グリーンアリーナ OPEN/START 17 00/18 00 キリンチューハイ 氷結 Presents Perfume 3rd Tour「JPN」 http //www.perfume-web.jp/cam/JPN/ セットリスト: 01.The Opening 02.レーザービーム(アルバムver.) 03.VOICE 04.エレクトロ・ワールド 05.ワンルーム・ディスコ ―MC― 06.Have a Stroll 07.時の針 08.微かなカオリ 09.スパイス 10.JPNスペシャル(仮) (music by 中田ヤスタカ) (着替え曲) 11.GLITTER(アルバムver.) 12.Perfumeメドレー シークレットシークレット(イントロ) 不自然なガール Take me Take me Baby cruising Love 575 love the world I still love U シークレットシークレット(アウトロ) 13.ポリリズム ―MC―(P.T.A.のコーナー) ※「Body Soul」 14.FAKE IT 15.ねぇ 16.ジェニーはご機嫌ななめ 17.チョコレイト・ディスコ 18.MY COLOR アンコール E01.Dream Fighter E02.心のスポーツ
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/185.html
クリフトとアリーナの想いはPart7 97 :ミネア1/4 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/03/14(水) 06 25 00 ID zyTEPsQz0 私とクリフトさんには、共通の話題が多い。 同じ回復系呪文の遣い手であり、お互い、手芸や料理も嫌いじゃない。 また、神官であるクリフトさんは、霊の世界にも詳しくて 私達は、暇さえあれば、2人でいろいろなことを語り合っていた。 にもかかわらず、仲間うちで私とクリフトさんの仲が取りざたされることはなかった。 皆、クリフトさんが心から想っている人が誰か、良く知っているから…。 「ねえミネア。あんたまさか、クリフトのこと好きなの?」 ある日、2人きりのとき、姉さんからの突然の質問に私は冷やりとした。 「何を言うの、姉さん。あの人にはアリーナさんがいるじゃないの。」 「それじゃ、答えになってないわよ。」 「ばかばかしい。年下の、しかも他の女性を好きな人なんか、好きになりません。 クリフトさんとは良いお友達よ。」 「…なら、いいけどね…。」 疑わしそうな姉さんの視線をさけるように、私はその場を離れた。 姉さんに言った言葉がそのままはね返り、私を切りつけてくる。 …他の女性のことを好きな人なんか…、か。 クリフトさんに最初に会ったときには、 力尽き、闇の力に取り込まれそうになっている姿を、恐ろしくも気の毒に思った。 回復した後は、その常識ある言動や神官らしい落ちついた物腰に安心と好感を抱いた。 その後、クリフトさんが、あのとき闇に取り込まれていた理由を知った。 自分の命を危険にさらして、神官としての誓いに背いてまで、禁呪を覚えた。 全ては、想い人のため…。 たとえ、その想いが届かなくても。 それでも、守る。命を懸けて。 その、アリーナさんに対するクリフトさんの真摯な想いを知ったとき。 ―――私は、恋に落ちた。 本当に、ばかばかしくて、笑ってしまう。 他の女性を想う心を知ったがために、その人を好きになってしまうだなんて、 要領が悪いにも程がある。 そんなある日、私は、クリフトさんにあることを打ち明けた。 「メガザルを覚えた…?何てことを!!」 「私なんて、攻撃も回復も中途半端で、これくらいしか役に立てないから。」 「そんな!ミネアさんは、いつも素晴らしい働きをされてるじゃないですか。 皆、ミネアさんを必要としています。」 真剣な目で私を見つめるクリフトさん。 「…だから、お願いですから、そんな呪文、使わないでください。」 そんな目で、そんな声音で、でも、あなたの想いはここにはない。 ―――それでも、かまわない。 私が好きになったのは、アリーナさんを一心に想うあなた。 だから、あなたに、アリーナさんへの想いをあきらめて欲しいとは思わない。 ただ…、一つだけ…。 私がメガザルを覚えた理由。 私の命と引き換えに、他の皆が完全に回復したそのとき。 そのときだけは、クリフトさんの思いは私だけに向けられる。 きっと彼は、全身全霊で、私に蘇生呪文をかけようとするだろう。 クリフトさんの瞳に写るのは、私だけ。 …いっときでいい。 …あなたを、独り占めさせて欲しい。 それが、私の、たった一つの望み。 気づくと、クリフトさんは、まだ心配そうにこちらを見つめていた。 「…そうね、できるかぎり使わないようにします。」 私は、さらりと嘘をつくと、クリフトさんに微笑んでみせた。
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/203.html
クリフトとアリーナの想いはPart7 434 :シンデレラ1/8 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/05/30(水) 20 04 48 ID nBRISody0 あるところに、輝く太陽色の髪、真紅の瞳を持つ、それは美しく清らかな少女がおりました。 その少女の名前は、シンデレラ。 シンデレラは、継母とその連れ子である、紫の髪をした姉達に…。 「ちょっと待ったーーー!」 「姉さん!しょっぱなから話の腰を折らないでちょうだい!」 「だって、何であたしが意地悪姉の役なのよ!どう考えても主役はあたしでしょー!」 「…いや、酒乱のシンデレラって、想像するだけで怖いから。」 「年齢的にも無理ですよね。やはり、主役は姫様しかいらっしゃらないかと。」 舞台裾でひそひそ囁き合う勇者とクリフトに、 「…あんたたち、なんか言ったかしら。」 マーニャが低い声で呪文を詠唱し始めた。 舞台下からトルネコが慌ててメガホンで呼びかける。 「マーニャさん!姉の役が嫌なら、あとは魔法使い役しか残ってないですよ!」 「…くっ!後で覚えてなさいよ、あんた達!」 「はい、リテイク行きます!」 トルネコの掛け声で劇が再開された。 心優しいシンデレラは、継母とその連れ子である姉達に、いつもいじめられていました。 「お姉さま、床掃除はこれくらいで良いかしら。」 ほうきと雑巾を持って舞台に現れたアリーナを見て、クリフトがハンカチで目頭を押さえた。 「ああ、姫様、何ておいたわしい…!」 「しっ、クリフトうるさい!」 「あーら、シンデレラ。この床の染みはなんですかしら。」 「あ、すいません、お姉さま。」 「こんな大きな汚れにも気付かないなんて、どこを掃除していたのやら。」 「…ミネア、あんた、妙にこの役、似合ってるわね…。」 「ムカ。いいから姉さん、セリフをつないでよ!」 「分かったわよ!シンデレラ、この役立たず、えい!…って何すんのよ、アリーナ!」 アリーナをぶとうとしたマーニャは、逆に舞台端まで投げ飛ばされて激怒した。 「ご、ごめん、マーニャ、つい反射で…。」 「カーット、カット!」 トルネコがメガホンで指示を出す。 「仕方ありませんね、ここらは、あとで適当に編集しますから、次のシーンに移りましょう。」 継姉達は、シンデレラを置いて、お城の舞踏会に行ってしまいました。 シンデレラは1人残された台所で、ほぅ、とため息をつきました。 「武闘会かぁ。私も、是非、出席したかったわ。」 「姫様、セリフが違っておりますじゃ。」 「…聞いている分には同じですから、ここは流しましょう。」 そこにバン!という音とともに煙が上がり、背の高い魔法使いが現れました。 「ビビディ、バビディ、ブゥ!あなたの望みを叶えましょう!」 「…クリフト。何やってるの?」 「…素で話しかけないで下さい!今の私は、良き魔法使いなんです!」 舞台裾では、出待ちの勇者が首を傾げていた。 「なあ、トルネコ。シンデレラに出てくる魔法使いって、婆さんじゃなかったか?」 「マーニャさんが魔法使いやってくれないし、役者が足りないんで、この際目をつぶりましょう。」 「さて、シンデレラ。あなたは良い子なので、ご褒美としてお城に行かせてあげましょう。」 「え、でも、こんな格好じゃ…。」 「大丈夫です、あなたに似合う素敵なドレスを用意しております、そーれ!」 シンデレラのボロボロの衣装が、あっというまにレースをふんだんにあしらったドレスに変わりました。 「わ、こんなんじゃ、武闘会で闘えないわ!」 「(早く出番を終わらせたいので聞こえない振り)お城に行くのに、乗り物も必要ですね、ほらっ!」 「あ、かぼちゃが!今日の夕飯のおかずにしようと思ってたのに!どうしよう!」 「大丈夫です!夕飯は私が変わりに作っておきます!」 「そっかー、じゃあ安心だー、クリフトの作るご飯、おいしいもの♪」 「え、そ、それは…どうもありがとうございます///。」 「あら、ホントのこと言っただけよ。」 「姫様…。」 舞台上で繰り広げられる2人の会話に、勇者が舞台裾からトルネコに声をかけた。 「なんか、途中から2人の世界に入っちゃってるけど、いいのか?」 「うーん、良くはないんですが、面白いからこのまま撮りましょう。」 「俺の出番が、なかなか回って来ないんだよな~。」 舞台の外での会話に、魔法使いは、自分の置かれた立場に気付いたようです。 「こほん、えー、シンデレラ、最後にこの靴を履いてください。」 マントの中からガラスの靴を取り出しました。 「えー、何これ、動きにくそうで、やだな~。」 「いけません!これは、王子様と結ばれるための重要なアイテムなのです! 帰るときに片方の靴を置いていくのが正しい使用法ですからね!」 「うーん、よく分からないけど、履けばいいのね。」 シンデレラは、ぶつぶつ言いながらもガラスの靴に足を入れました。 「…では、シンデレラ。魔法は夜中の12時に解けますから、それまでに戻ってくるんですよ。」 「うん!どうもありがとう、クリ…じゃなかった、魔法使いさん!」 シンデレラを乗せたかぼちゃの馬車は、お城へと去っていきました。 魔法使いは、それをどこか寂しそうに見送ると、ぽつんと呟いたのでした。 「どうか、王子様とお幸せに…。」 さて、舞台は変わって舞踏会会場。 緑色の髪を煌かせる王子の周りを、貴族の姫君達(マネマネによるエキストラ)が きゃわきゃわと取り囲んでおりました。 「よっしゃー、やっと俺の出番が来たか!ふはははは!」 「王子。今日こそ、結婚のお相手を決めてもらいますぞ。」 「わかってるって、爺。…っていうか、ブライ、今のセリフ実感こもってるなー。」 「当然ですじゃ。同じセリフを何度姫様に申し上げたことか…ううう!」 爺やと話している王子の目の前に、紫色の髪の姉妹が近寄ってきました。 「王子様、あなたと私が結ばれる運命が見えますわ。」 「何言ってるのよ。あたしの色気で一発撃沈よ、ね、王子様!」 「え、えーと…?」 ありえない強引なアプローチに、王子は思い切り引いておりました。 と、そのとき、大広間の扉がバーンと音を立てて開かれました。 「待って!私が勝負よ!」 「む、お前はシンデレラ!」 「こしゃくな、あともう少しだったものを!」 「…おい、ちょっと、お前ら、何か話を間違えてないか…?」 王子の突っ込みは軽く流され、シンデレラは一撃のもとに継姉達を倒したのでした。 王子は倒れた継姉達を前に、しばらく腕を組んで考え込んでおりましたが、 今の流れは無視することに決めたらしく、シンデレラに向き直るとダンスを申し込みました。 ホールを踊るお似合いの2人の姿に、皆が賞賛の目を向けます。 「どしたの、ソロ?何だか顔色が悪いわよ?」 「…いや、先ほどから背中に殺気を感じて…。」 (ザキという呟き声が聞こえたのは、気のせいだよなっ!) 王子は、背後を気にしながらシンデレラの手を握ると、その目を見て言いました。 「何て可愛らしい人なんだろう。シンデレラ、私と結婚してくれますか?」 「え…。」 そのとき、お城の時計が12時の鐘を鳴らし始めました。 「いっけなーい、門限過ぎちゃう!」 シンデレラは王子様の手を振りほどくと、一目散に家に向かって走り始めました。 「あ、そうそう、ここで、このアイテムを使うんだったわね。」 シンデレラは走りながらガラスの靴を脱ぐと、振り向きざまにそれを全力で放り投げました。 がすっ 1人後に残された王子様は、顔面にガラスの靴を突き刺し、血をだらだら流しながら 立ち尽くしておりました。 家に帰ったシンデレラは、楽しそうに、魔法使いにその日の出来事を報告しました。 魔法使いは、優しく微笑みながらシンデレラの話を聞いておりましたが、 つとシンデレラから目をそらすと、低い声で尋ねました。 「…それで、王子様とのお話はいかがでしたか?」 「うーん、ゆっくり話す間もなく帰ってきちゃったからなぁ…。」 シンデレラの答えに、魔法使いは、何故かほっとしたような表情になりました。 それからしばらく経ったある日のこと、城からお触れが回ってきました。 筋骨隆々の戦士が、シンデレラ達が住む館を訪ねてきたのです。 「王子殺害未遂事件の捜査中である。これが、犯人が現場に残した凶器だ!」 王宮戦士が取り出したのは、まさに、シンデレラが王子に投げつけ…いや、 その場に脱げ残ってしまったガラスの靴でした。 「ねえねえ、シンデレラって、こういう話だったっけ…?」 「なんか、微妙に違うような気もするんだけど…。」 舞台裾でスナックを齧りながら、マーニャとミネアが囁きを交わした。 「ほらほら、そろそろ出番ですよ、お2人さん。」 「舞踏会参加者は、全員容疑者だ!お前たちも、ガラスの靴をはいてもらうぞ!」 王宮戦士の命令に、継姉達がおっかなびっくりガラスの靴に足を入れました。 「あー、良かった~、私大丈夫だった~。」 「私にも、少し小さいようですわ。」 王宮戦士はむむむ、と口をへの字に曲げた。 「しかし、ここが最後の家なのだ!だとすると、犯人は一体誰なのだ?」 そこに、掃除を終えたばかりのシンデレラが通りかかりました。 「あ、私の靴!」 ガラスの靴を見て、シンデレラがのんきな声を上げました。 と、同時にその場の空気が凍ります。 王宮戦士が懐から手錠を取り出して叫びました。 「お前が犯人か~!大人しくお縄をちょうだいせい!」 「え?え?何なの?」 シンデレラは、何が起きたのか分からず混乱した顔で辺りを見回しました。 そこに、 バン! と音がしたかと思うと、魔法使いが現れ、シンデレラに手を差し伸べました。 「シンデレラ!こちらに!早く!!」 シンデレラは訳が分からないままに、魔法使いの手を取りました。 「待て~い!ルパーーン!」 王宮戦士は追いすがりましたが、魔法使いとシンデレラはそのまま煙の中に姿を消しました。 「ライアンさん、乗ってるな~。」 「完全に役を間違えてますけどね。まあいいでしょう。」 魔法使いは、安全なところまでシンデレラを連れ出すと、その顔を覗き込みました。 「シンデレラ。もはや、あなたは全国指名手配のお尋ね者です。 こうなったら、魔法の国に逃げて、私と一緒に暮らしませんか?」 シンデレラは、しばらく考えておりましたが明るい笑顔で答えました。 「うん、いいわ!掃除ばっかりしてるのも飽きちゃったし、魔法使いさん好きだもの!」 こうして、シンデレラと魔法使いは、魔法の国でいつまでも幸せに暮らしましたとさ。 FINE. 「カッーート!いやー、感動しました、素晴らしい!」 満足そうに拍手をするトルネコに、勇者が血糊を拭きながら抗議の声を上げた。 「ちょっと待てー!何なんだこの展開は!!シンデレラは王子と幸せになるんだろーが! これじゃあ、俺、ただの馬鹿みたいじゃねーか!」 クリフトも、魔法使いの衣装を脱ぎながら、不満そうな顔をする。 「そうですよ、これでは、魔法使いがシンデレラをだまし討ちしたようで不愉快です。」 そこにさっさと着替え終わったアリーナが、ひょこ、と顔を出した。 「そうかな、私、このお話の結末、けっこう好きよ。お城で王子様と暮らすより、 魔法の国で魔法使いと暮らす方が、断然楽しそうじゃない!」 クリフトが、着替えの途中で固まった。 「アリーナ、意味深だわ~、それ。どういう意味なのかしら~。」 マーニャがにやにやしながらクリフトを見る。 「え?って、言葉通りの意味だけど…。」 「だってさ。魔法使いさん、頑張ってシンデレラを魔法の国に連れてってやらないと!」 マーニャにつつかれ、クリフトは赤い顔をして部屋から逃げ出した。 トルネコは、楽しそうに皆を見ながら映写機を巻き戻すと、1人呟いた。 「できることなら、この映画を、お2人の結婚式で上映したいもんですね…。」 ホントにおしまい。
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/78.html
クリフトとアリーナの想いは Part4.2 575 :【舞姫と神官】1/6 ◆cbox66Yxk6 :2006/03/16(木) 12 17 15 ID o4ZCiKxA0 「あ、姫様!」 「ライアンさん、手合わせ、願えます?」 アリーナは逃げ出した。 「姫様、あの・・・」 「トルネコさん、私の武器のことなんですけど・・・」 アリーナは無視をしている。 「姫様?」 「眠くなってきちゃったわ。おやすみなさい、ブライ」 アリーナは眠ってしまった。 なぜ?どうして?一体何が? 「あ~あ、見事に無視されちゃって」 妙に愉快そうに笑いながら、グラスを片手にマーニャは鉄の扇をパタパタと煽いだ。 その声で我に返ったクリフトは、むっとした顔でマーニャを見据える。 「さては、マーニャさん、何かご存知ですね」 (あらあら、目が据わっちゃって・・・相当応えているみたいね) 大事なお姫様のこととなると見境がなくなるからねぇ・・・。 マーニャが苦笑していると、クリフトはさらに不機嫌になる。 「マーニャさん!」 普段のクリフトからは想像も出来ないほど、鋭い視線。 (ほんとに、からかい甲斐のあるヤツよね) マーニャはグラスの中身を揺らしながら、しばし思案する。そして、クリフトに艶然と微笑みかけた。 「知ってるわよ。でも、ただで教えるわけにはいかないね。・・・そうね、あたしに飲み比べで勝てたら、教えてあげる」 「受けてたちましょう」 「決まりね」 こうして壮絶なる飲み比べが始まった。 (く、やるわね、こいつ) マーニャは内心舌を巻いていた。すでに酒場のカウンターは酒のビンが林立状態だ。 マスターは大口の客を捕まえたと喜んでいいものかと少し不安げな表情でこちらを窺っている。 いつもほとんど酒を飲まないクリフトのことを下戸だと高くくっていたのが、どうしてどうして、酒好きライアンも真っ青な飲みっぷり。それでいて乱れたところがまったくない。 マーニャはいつも以上に酔いの回った自分にため息をつきつつ、宣言した。 「あぁ、もう、いいわよ。教えてあげる。一回しか言わないからよく聞きなさいよ」 この声に、クリフトがほっと息をつくのがわかった。 何気にかれもかなり限界に近かったらしい。 悔しい気分もあったが、一度口にしたことを撤回しては女が廃るってもんさ、と気を取り直す。 そしておもむろに口を開いた。 「いや、何。ちょっと男と女の夜の営みについて、話しただけ」 その言葉を聞くや否や、クリフトは顔を真っ赤にした。 「マーニャさん、なんてことを!」 姫様は、姫様は・・・。 あまりのことに言葉が続かない。 マーニャはそんなクリフトの様子を見て、クスクスと笑った。 そしてさらに火に油を注ぐ。 「いいじゃないの、いずれは知ることなんだし」 あんただって、やりやすくなるでしょ? 含みを持たせて流し目を送ると、クリフトは涙さえ浮かべながら言い放った。 「何てことをしてくれたのです!それは、私が手取り足取り、一から姫様にお教えしようと思っていたというのに!!」 煩悩神官の本音、ここにあり。といったところだろうか。 この発言にはさすがのマーニャも驚いた。 「えっと、それは、悪かったわね」 「本当に!あぁ、私の10年来の夢が・・・」 ぶつぶつと己の野望(欲望?)を呟き続けるクリフトに、実は相当酔いが回っていたらしいことを知る。 (へぇ、意外と、ねぇ) 野心家だったのね。 妙な感心の仕方をしながら、マーニャはクリフトを見つめる。 その様子があまりに悔しそうでちょっと可哀相になった。 (結構かわいいわね。そうよね、こう見えて苦労してるもんねぇ、こいつも) 思わず涙ぐんだマーニャ自身、思考がかなり危うくなっている自覚がない。 飲んだ量を考えればわかりそうなものだが、このときのふたりは正常な判断が出来る状態ではなかった。それゆえに見られる、珍しい光景。 がっくりとうなだれ落ち込んでいるクリフトに、昔のミネアの姿が重なった。 マーニャはクリフトの頭に手を伸ばすと、躊躇することなく抱き寄せた。 「あぁ、よしよし、あたしが悪かったわ」 悔し涙を流し続けるクリフトを胸元に引き寄せ、幼い子にするようによしよしと頭を撫でる。 クリフトはそのふくよかな胸すら感じないのか、しくしくと泣き続けている。 本人たちの思惑はどうであれ、その姿は、客観的に見れば相当『親密』な間柄を連想させた。 酒場にいた客たちがからかうのも忘れ、思わず目を逸らしてしまったぐらいだ。 二人のやり取りから大まかな事情を知っていたマスターは、顔色一つ変えずに見守っていたが、ふと視線を感じて階段を見やった。 2階の宿屋につながる階段に佇んでいたのは、艶やかな赤毛の少女。 彼女はふたりの様子にかなりショックを受けているように見えた。 マスターはため息をつく。 (酒は飲んでも呑まれるな) 酒場マスター歴15年。きっとこの先もこの座右の銘だけは変わらないだろうと、ひそかに思った。 翌日も、クリフトは最愛の姫に徹底的に避けられていた。 「あーあ、見事に逃げられて」 マーニャの言葉にクリフトがきっと睨む。 「さては、マーニャさん、何かご存知ですね」 いくつかのやり取りが行われ、マーニャは挑発的な物言いをした。 「ただで教えるわけにはいかないね。あたしと飲み比べて勝てたら、教えてあげる」 「望むところです」 「「マスター、お酒!」」 ふたりの会話を聞いていて、マスターは眉をひそめる。 どうやら、彼らは昨晩の記憶がないらしい。 昨夜と同じ流れの会話を交わしながら、飲み比べに入ったふたりを横目に頭を振った。 (おかわいそうに) 思わず、昨夜のことを話そうかと口を開きかけたが、何を思いついたのか、にこやかに笑いながら立ち上がると、鼻歌交じりに酒が保管してある地下へ降りていった。 「そうそう、今月は赤字だった」 人情家の酒場のマスターも、商売人。 このあと、連夜に渡って行われた飲み比べにより、売り上げを前月比2倍まで伸ばしたマスターは、ほくほく顔でこういった。 「お客様は神様です」 「うわ、何だよ。この請求額!?」 クリフトとマーニャの飲み比べは、ソロのこの一言によって打ち切られることとなる。 そして飲み比べが終わった後も、相変わらずアリーナに避けられ続けるクリフトの姿があった。 マーニャは笑った。 ・・・お~ぉ、見事に避けられちゃって。でも、クリフト、あんた結構幸せかもよ? アリーナが避けてるのってあんただけなんだよね。 それはさ、アリーナにとってあんただけが『男』だってこと。 アリーナの後ろを必死になって追い掛け回しているクリフトをグラス越しに眺め、マーニャは 呟いた。 「煩悩神官に乾杯!」 ・・・早く『願い』が叶うといいわね。 (終)
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/424.html
クリフトのアリーナの想いはPart12.5 551 名前 ハイライト1 Mail 投稿日 2012/11/22(木) 14 47 47.31 ID RGI24MHb0 むしゃくしゃしてタバコ銘柄を無理やりクリアリにしてしまう事にしてみたらあら不思議、何でも萌えられ なかったらごめんなしゃい FC版のお兄さんっぽいクリフトと無邪気アリーナで hi-lite 水の街はリバーサイド。 一つの舟が細波に揺られている、水面には小魚達の群、群、群。 「ねぇクリフト、あなたばっかり舟を漕いで…ずるいわ、私にも一回やらせて」 亜麻色の髪の少女が無邪気に古めいたパドルを掻く。 くるくる、くるりん。 舟はその場で回る回る。 「だめ、巧いこといかない。どうしてかしら」 「アリーナ姫様、これには少々コツがいるのですよ」 蒼髪の青年がハハ、と少し笑って少女からパドルを失礼します、と恭しく受け取る。 すーい、すい。ぱちゃん。 滑らかに進む舟と魚達の中、くるくるの明るい髪と使い古した長い神官帽がゆらゆら逆さに映る。 「やっぱりずるいわ、あなた何でも出来るのね」 「いやいや…そのような事もありません、私にだって出来ぬ事も山ほどあります」 「例えば?」 少女の機嫌はまるで対岸の波のように揺れている、どうやら目の前の青年の器用さに嫉妬しているようで。 「そうですね…武術の腕は姫様、あなたには適わないですよ?尤も剣術はライアンさんやソロさん、魔術はブライ様やマーニャさんミネアさん、商業なんかはトルネコさんの独壇場じゃあありませんか」 「そうね、そう。だけど剣術の腕だってどんどん上達しているじゃない。あと学問ね、何だって知ってる。私たくさんクリフトから教えてもらったわ」 「姫様…それはそうならざるを得なかったのですよ、私はこの旅に出るまでは何の取り柄も無い凡庸な神官でした故」 ぱしゃん、ぱしゃん。 パドルは尚も水面を掻いて行く。沈黙。 「ねぇ、クリフト」 「何ですか?」 「あなたはもしかしたら自分の事なんにもないって思っているかもしれないけれど、そんな事絶対にないわよ」 「姫様…」 ぎい、と音を立てて掻く手が止まる。 徐に小舟が泳ぎだした時、少女はきっぱりと青年に向き合い口を開いた。 「私、クリフトが居なかったら絶対あそこで挫けてた、ほら…みんな失踪した時」 「姫様、私は…」 「クリフトがあの時涙を拭って抱き締めてくれなかったら私、今頃心身カラカラのしわしわになっちゃってたわ、随分と大泣きしたもの」 「あの時は、こうするしか思い付かなんだで…申し訳ありません…」 難しい顔をした青年の口にしーっと細い指が当てられる、その先は言わないでと少女のイタズラな笑顔が語りかける。 「悲しい事言わないで。クリフトは優しくて居るとあたたかいの、だから私もみんなも安心して背中を預けられる。旅に出るまでも、出てからも、きっとこれからもクリフトはずっとあたたかいのよ、心の日だまり」 「日だまり…ですか」 青年の心の中に光が差した瞬間、水面もまたキラキラと光を浴びていた。 舟はゆっくり進み出す、ただ徒に風のままに。 「それでも姫様、私の日だまりはいつ何時もあなた様です」 柔らかな微笑みは少女の頬を明るく染めて日だまりの中、静かに揺られていた。 水の街リバーサイドにて、青年と少女の緩やかな午後。 「…あれ見ろよ」 「見たわよ見たわよ!いーい感じじゃないのー」 一方陸地、対岸。 勇者ソロと踊り子マーニャの出歯亀。 民家の壁に隠れてにやつく彼らは少々いやかなり、地元住民達から不審がられていたのには気が付いていないらしい。 「ちょっと、おい!あの絵描きのオッサンみろよ!」 「うわ!ホントに絵になってるわよ!」 「よっしゃ題名訊こうぜ題名!」 「ウヒヒ、それはいいわねー、無題……なーんてショボい事絶対阻止よ阻止!」 舟の上には男女、お互いを見てはにかむ、水面の煌めきが更に二人を魅せる。 こうなるともうどう見てもカップルである。 彼らが喩え、違いますお姫様とその従者です!と頑なに否定しても「恋に落ちたお姫様とナイトです」という方が正しいような輝きを放っていた。 そして世界が再び平和になったちょっと後、サントハイムの国では大きな婚礼の儀があった。 その時、今ではすっかり有名になった絵描きのオジサンが国へ一つの絵を献上したという。 絵の名前はハイライト、日の当たる場所。 姫君と神官が大層狼狽えているのを後目に、勇者と踊り子はこれ以上ない笑いを上げてオジサンの絵画に絶賛を送ったという。 *
https://w.atwiki.jp/kuriari/pages/154.html
クリフトのアリーナへの想いはPart5 725 :姫様のマント 1/9:2006/08/02(水) 01 16 21 ID A8MVjg8j0 壮絶なキングレオ戦に勝利した後、モンバーバラの宿屋にて体を休めることになった。 夕食後に宿屋の井戸でうずくまっているソロにライアンはそっと近づいて後ろからポンと 肩をたたいた。 「俺って勇者とか言われつつ実はリーダーシップに欠けてるかも。」 と落ち込んだ様子のソロ。 「トルネコさんはもともとああいうキャラだとしても、あの真面目なクリフトまでが 姫様ホイミとかしちゃって俺の命令って認めてもらえてないのかな。」 「いや、クリフト殿のアレは仕方ないでしょうな。それより、ソロ殿がそこまで落ち こんでおられることのほうがこのライアンは心配ですな。」 「ううっ。こんなこと相談できるのはやっぱりライアンだけだ。・・・実は」 「実は?」 「チェックインした後、財布をなくしてしまって今の俺らの持ち金は¥0。 銀行から下ろしたお金までどうやらすられちゃったみたいなんだ。もうリーダー失格決 定!」 頭を抱え込んで座り込むソロ。 「なぬ!?・・・いや、拙者はソロ殿を責めるなんてことはしませんぞ?こうなったら拙 者が一晩で稼いでくるでござる。ソロ殿はここで待っていてくだされよ。」 そう宣言するやいなや、ライアンはすごい素早さでソロの前からいなくなった。 「ライアン、戦闘中もこのくらい素早ければいいのになぁ・・・って何するつもりだろ?」 「クリフト殿ー。おられるか?ライアンでござる。ちょっと相談があるでござるよー。」 男部屋を激しくノックするライアン。 「どうしましたか?ライアンさん。そんなに慌てて。」 とドアを開けてくれたクリフトの手にはアリーナの破けたマントが。 「むむむむむうぅ!?おぬしがそのように乱れておるからソロ殿があのような気苦労を 背負うでござるよ!?まったくもうっ。」 「はぁ?何怒っているんですか。うわっ」 ライアンはクリフトを担ぎ上げ、どこかへ走り去っていった。 「これから姫様ホイミのお仕置きをするでござる~!!!」 「???」 その後、ブライの監視つきで町を散歩して帰ってきたアリーナが、男部屋の入り口に 落ちている自分の破けたマントに気づいた。 「まあっ。クリフトったら。マントを直しておいてってお願いしたのにどこへ行ったの かしら。」 「姫様・・・たまには自分でお裁縫してくだされ。はぁー・・・」 「ライアンさんっ。下ろしてくださいっ。一体、劇場に何の用ですか。」 「なに。これから二人で舞台に出て、金を稼ぐのでござるよ。ご協力あれ。」 クリフトの頭は真っ白になった。 「えええええ!?絶対イヤです。勘弁してください。わー」 暴れるクリフト。しかし、腕力でライアンにかなうはずもなく、担ぎこまれたまま舞台 の上に躍り出てしまった! ライアンはクリフトを投げ飛ばして剣を抜いた! クリフトは華麗に着地した! 「さあー!覚悟めされよ!」 「(ううう。ライアンさんにはなにか訳があるに違いない。冷静になるんだ、冷静に!)」 クリフトも剣を抜いた。 ざわめく観客。 「なんだーチャンバラかー!?いいぞ、やれー」 観客のテンションは最高潮に達した。そんな群集のなかに青ざめたミネアがいた。 「な、なんでライアンさんとクリフトさんが舞台に!?」 きっと姉さんが楽屋でなにかけしかけたに違いない。助けなければ、と一歩踏み出した ミネアの袖がぐっと引っぱられた。 「ね、姉さん。いつの間に観客席に。それより二人が大変なの。助けましょう。」 「あー、余計なことはしなくていいから楽しみましょ!」 舞台に目をやると、そこにはチャンバラ劇ではなくモンバーバラの民族音楽に合わせて 剣舞が披露され始めた。時には激しく時には優雅に、音楽のリズムに合わせて繰り広げ られる美しい剣の舞。観客はこの珍しくも素晴らしい演目にすっかり魅了されている。 「わぁお。あの二人にこんな特技があったなんて。やるぅ。安心したね、ミネア。」 姉が妹のほうをみると、妹はすっかり舞台に集中している様子。目は・・・クリフトを 追っている。 「ミネア・・・。(そうだったんだ。今まで気づかずにいてごめんね)」 剣の舞が終わると、観客は劇場がはちきれんばかりの歓声を二人に浴びせて沢山のゴー ルドを投げている。 「わ~。こりゃ大もうけね!プロの踊り娘としてちょっとくやしいわ。」 姉妹が楽屋にいくと、疲れ果てたクリフトの傍らでゴールドを計上するライアンがいた。 「二人とも!すっごくよかったわよ~ん。」 楽屋には、姉妹にとって懐かしい人がもう一人。 「なんだ、この二人はマーニャちゃんの知り合いだったのかい?なるほどね。パノンも いなくなっちゃったことだし、これからも出演頼むよ。」 「二度とゴメンですっ」 慌てて否定するクリフトを見て、ライアンとマーニャは大笑い。ミネアはそっとクリフト の額の汗を拭いてあげた。 4人で劇場を後にすると、外の空気が冷たくてとても心地いい。 「私、クリフトさんがあのようなことをなさるとは本当にびっくりしました。リズム感も あるし、ぶっつけ本番であそこまでできるなら踊りの才能があるのではないでしょうか?」 「いえいえ、とんでもない。もともとライアンさんは王宮戦士の嗜みとして剣舞をされて いたのでしょうが、私は神に仕える者の儀礼的なものでしかありません。今日はひたす らライアンさんに合わせて乗り切っただけですよ。」 早くあんな恥ずかしい舞台のことは忘れたいといった感じで顔を赤らめるクリフト。 「ライアンさんもとても・・・・・」 ミネアがライアンのほうを向くと、すでにライアンとマーニャの姿はなかった。 「あ、あれっ!?はぐれちゃったのかな。でも、ライアンさんが一緒なら大丈夫かな。」 ミネアがきょろきょろしている間にクリフトはすたすたと早足で宿屋に向かっている。 アリーナから頼まれたマントの修理のことで頭が一杯になっていたのである。 「ま、待って・・・待ってくださいクリフトさんっ」 とクリフトの背中に向かって叫ぶや否や、ミネアは足元の石に躓いて思い切り転んでしま った。薄暗くて足元の石に気づかなかったのだ。 「大丈夫ですか!?」 「あいたたた・・・す、すみません。」 駆け寄ってきたクリフトにつかまって起き上がるミネア。ひざだけでなく、鼻もすりむい てしまって血が滲んでいる。ミネアは自分で治そうとしたが、クリフトのほうが呪文の詠 唱が早かった。 「はい、治りましたよ。暗いから気をつけて。」 きっと私の顔は真っ赤になっているんだろう・・・密かな想いに気付いてほしいようなほ しくないような、でもやっぱり今あんまり顔を見ないで欲しい。宿に着くまでのつかの間 の時間だが、ミネアは幸せな気持ちでいっぱいになっていた。 クリフトはミネアの歩く早さにあわせてゆっくり歩き出した。 そんな様子を木陰から覗いていた人物が一人・・・・ マントを持ってクリフトを捜し歩いていたアリーナだった。 「私、何で隠れているのかしら?」 (知らなかった・・・クリフトとミネアさんが夜のモンバーバラを一緒に過ごす仲だった なんて。今までもこうやって私が寝ている間に二人で夜の街を散歩とかしていたのかな。 散歩とか散歩とか散歩とか・・・?)それ以上想像が膨らみようもないアリーナであった が心臓のドキドキは収まりそうもない。そもそも何故ドキドキするのかも分からない。 ミネアがクリフトの袖を引っぱっている。 そして二人で木陰のベンチに腰掛けて何か話し出した。 さらに、建物の間から様子を伺っている二つの影。 「一体、何を話しているのでござろうな?」 「なんだか長話になってるようだけど、気になるわねー。」 「ところで、マーニャ殿は拙者に何の用でござるか?拙者は早くソロ殿にこの8000G を届けて安心させてあげたいでござる。」 「え?てっきりその金でこれから飲むのかと思ったのに・・・。」 いつになく艶っぽい目つきをしてマーニャが可愛らしく拗ねる。ライアンは深く息を吸い 込んで言った。 「・・・拙者は今度舞台にあがるとすればマーニャ殿と剣の舞をしたいでござる。」 「なあに、それ?口説いてるの?どうしてもって言うならいいわよ?でも、練習の前に1 杯だけおごってよね。」 アリーナはいまだかつて経験したことのない気持ちで一杯になっていた。今までクリフト が自分のために色々世話をやいてくれることは当然だと思っていなかったか。大所帯とな った今はクリフトだってみんなの共通の目的のために動かなければいけない。頭では分か っているけどクリフトが自分以外の女性に優しくしているのを見るのは何だか抵抗がある。 (私はクリフトのことを束縛して所有物みたいに思っていたのかな・・・そんなの最低。 サントハイムでは聖職者の恋愛や結婚は自由なわけだから、クリフトとミネアさんが愛し 合っているのなら私は喜ばなければいけないのよね?盗み聞きなんて良くない。クリフト はいつか私には話してくれるよね・・・)アリーナは静かに宿に戻った。 「ミントスで出会った頃は、ミネアさんと共通の宿敵を持つ運命だとは思いもよりません でしたよ。いよいよ、夜が明けたらサントハイムへの船旅になります。サントハイムの城 にいるというバルザックとやらを倒したら、城の人々は戻ってくるのでしょうか・・・ミ ネアさんに聞いてみたいけど聞かないほうがいいでしょうね?」 クリフトの透き通った青い目から不安と焦燥感が感じられた。今日のクリフトは色んな表 情をみせてくれる。 「ソロさんは、バルザック討伐のパーティーはサントハイムのお三方と姉さんの4人と決 められました。私はソロさんたちと一緒に後方から健闘を祈っています。」 ミネアはサントハイムの人々が無事に戻ってくるように祈っている、とは言えなかった。 もし、サントハイム王家そのものがなくなってしまえばアリーナは王女でもなんでもない ただの女の子。クリフトも王家直属の神官ではなく、ただの聖職者になる。二人の身分の 差はなくなり、二人が恋愛するにも支障はない。城の人々にはまだ戻ってきてほしくな い・・・・ミネアにはそんな気持ちもあった。逆に無事に戻ってきたとしても、クリフト がそれで旅をやめてしまわないかと不安になったりもする。しかし、ミネアの返答を聞い たクリフトは、ミネアはサントハイムの人々が戻ってこないことが分かっていてはぐらか したのだな、と思って小さなため息をついて目を伏せた。 「・・・・私ではアリーナさんの代わりにはなれませんか?」 ミネアの声は震えていた。今日こんなことを言うつもりはなかったのに、秘めたる想いが 溢れ出て言葉に出てしまった。引っ込み思案なミネアにとって精一杯の告白。 クリフトは目を開いてミネアのほうをまっすぐに見た。ミネアは肩を震わせ目を合わせよ うとしない。いや、合わせられずにうつむいていた。 「・・・・・。」 「・・・・・。」 沈黙の時間がとても長くて重くて、ミネアは押しつぶされそうになった。クリフトの返事 が怖くて涙が出てきた。叶わない恋だって分かっていたし、伝える勇気なんてなかったの に、どうして言ってしまったのだろう。クリフトはミネアの涙をハンカチでそっと拭いな がら優しい声で言った。 「ミネアさんは今のままでいいのですよ?なにも姫様みたいに今から武術を会得しような んて考えなくても・・・。一緒にバルザック討伐に加わりたい気持ちは痛いほど分かりま すが、ソロさんにはソロさんの考えがあってのことでしょうから。」 全然、伝わっていない。ミネアは全身の力が抜けていった。が、力を振り絞って言った。 「私・・・待ちます。」 クリフトがアリーナのことをあきらめるのを待つ、私だって負けない・・・そう決意する とますます涙が出てきて止まらなくなった。 「え?マーニャさんたちをですか?そろそろ寒くなってきたし、モンバーバラの夜道を女 性一人で歩くのは危険ですから一緒に宿に戻りましょう。」 やっぱり伝わらない・・・私のこのせつない想い。ミネアはますます全身の力が抜けてつ いには立てなくなった。 「相当お疲れのようですね。キングレオ戦では本当にお疲れ様でした。」 そういってクリフトはミネアをおんぶして宿に早足で戻っていった。鈍い、鈍すぎる。 宿のロビーにはライアンの帰りを待っていたソロがテーブルに伏して寝ていた。家計簿と 正義のそろばんを枕にしてぐっすり寝ている。もう、ブライ様やトルネコさんも部屋で寝 ていらっしゃるのだろう、そう思って寝ているソロの傍をしのび足で歩くクリフト。ミネ アを女性部屋まで送り届けようと角を曲がると、女性部屋のドアの前にはなんとアリーナ が立っていた。 泣いているミネアをおんぶして夜遅くこっそり戻ったクリフトを見たアリーナのこころの中 でなにかがはじけ飛んだ。アリーナは目に涙を浮かべてむりやり笑顔を作って言った。 「私はクリフトに何でも相談して頼っていたのに、(クリフトは私に自分のことを何にも話 してくれていないのね。)」 ミネアは慌ててクリフトから離れた。ミネアにははっきり分かった。 アリーナもまたクリフトを一人の男性として意識しはじめているのを。 「ア、アリーナさん、違うんです。私・・・」 誤解を解こうとするミネアのか細い声はクリフトの力強い声にかき消された。 「姫様!?泣いていらっしゃるのですか?このクリフト、姫様を悲しませるようなことは 決してしないと王様と神に誓っていたのになんという不覚!!すぐにマントを修理いたし ます。たとえ、徹夜してでも!!」 「ううん。私、何でもクリフトに頼りすぎて反省してたの。自分でやってみるから、やり 方を教えてほしくてクリフトが帰るのを待っていたのよ。」 この男、どこまで鈍いのか・・・でも、こんな感じなら私にだってまだチャンスはあるわ、 ミネアはそう思った。 夜も明け方・・・酔っ払ったライアンとマーニャが宿に戻ってきた。昨日の夜、剣舞で稼 いだ8000Gはたったの8Gになっていた。ライアンは8Gを寝ているソロのポケット に入れて、小声でつぶやいた。「スマンでござる。うっかり飲みすぎたでござる・・・ヒッ ク。」「ごめん・・・ソロ。あたしったらバルザック戦を前にしてテンション高くなっちゃ って。ヒック。」マーニャも小声でささやいた。 ソロが寝ているテーブルとは別のテーブルでは徹夜でお裁縫をするクリフトとアリーナが いた。マントを縫う前に何故かトルネコが破いてしまったという網タイツを練習がてら修 理しているところだった。 「このクリフト、姫様に必要とされているこの瞬間がとても幸せです。さあ、頑張って仕 上げましょう。」 「大袈裟ね。お裁縫ぐらいで。これからもっと色々教えてもらうんだから、私の傍をはな れないでよね。」 このあとしばらく、ソロが自分の統率力に疑問をもって悩みぬいたことは言うまでもない。 クリフトの姫様ホイミの回数は増えるし、アリーナはクリフトが馬車の中だと改心の一撃 を出さない。ミネアはクリフトばかり回復させるし、いままで捨て身で自分を助けてくれ ていたライアンまでがマーニャばかりかばうようになった。トルネコとマーニャは以前か らああいう性格だったけど、最近ますますみんな変だ。みんな立派な職業についているけ ど、俺は何でもないんだよな・・・勇者ってそもそも何だ?悩む17歳、ソロ。 勇者っていうのは世界を変えていく力がある人なのだ、とマスタードラゴンに教えてもらえ るのはまだまだ、先。